おーてぃーのゲームブログ

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原作ファンがネトフリ版『三体』シーズン1を見た感想(ネタバレ注意)

おいっす。おーてぃーです。

ネトフリ版『三体』を一気見したので感想をば。

 

原作既読なのでフラットな目線では見られなくなっており、原作未読の人がどう思うのかは全く分かりません!

原作とドラマ、両方のネタバレ全開なのでお気をつけて。

 

全体的な感想

結論から言うと、なかなか面白かったです。思っていたよりもずっと。

ショーランナーがゲースロを手がけたあの悪名高いD&D、ということで期待半分・不安半分で見始めましたが、気づいたら一気見してました。

かなり大胆な脚色でしたが、原作のエッセンスを上手く取り入れつつ、SFに馴染みがない人でもすんなり見られるような作品に仕上がっていたと思います。

 

原作に忠実な実写化、というのは既にテンセント版がやっていたらしいので(ぼくはまだ見てない)、そことの差別化という意図もあったんでしょう(あと、権利上の制約というのもあったみたいです)。

第一部、第二部、第三部の物語を大胆に再構築して同時並行的に描くだけでなく、主要登場人物の描写や関係性・配置も大幅に変わっているので、新鮮な気持ちで見ることができました。

原作通りではありませんでしたが、確かに『三体』を見たという満足感を得られました。

 

見る前は、「シーズン1は取りあえず『三体(第一部)』の実写化なんだろうな」と思っていましたが、蓋を開けてみると第一部どころか『黒暗森林(第二部)』『死神永生(第三部)』の序章を合わせてわずか8話で一気にこなしてしまうという、とってもスピーディーな展開になっていて驚き。

ちょっとスピーディー過ぎると言ってもいいかもしれません。なんせ、エピソード2でもう葉文潔が信号を送っちゃいますから。

逆にテンセント版は第一部だけなのに全30話!もあるというので、今度見比べてみたい。

 

原作の最も面白いところと言ってもいい「面壁計画」、その発足までをシーズン1で済ませておきたかったという意図は分かるのですが、全8話でやるのはちょっと駆け足過ぎたような気がします。
10~13話ぐらいでもうちょい丁寧にやれなかったものか、とは思いました。

展開がかなり早いので、グイグイ引き込まれていくし見やすくなっている反面、原作を読んだときに感じた、ジワジワと事態が進行していく感じ、点と点が繋がって謎が解けていくワクワク感は薄まっていたかなと。

今作が面白いと感じた人には、ぜひこれを機に原作を読んでみてほしいです。

 

原作では小難しい理論が多く、そこが面白いところなのですが(同時にそこが読み難いところでもある…)、今作だと説明が省かれすぎていて、人間コンピューターとか智子生成のくだりとか、「初見だとなんのこっちゃ分からなそう...」と思う場面が多々あったのは残念なところ。

 

主要人物たちの再構築をはじめとしたドラマオリジナルの部分は意外とよく出来ていて、気が利いていたり、笑わせてきたりするところや、時代に合わせてアップデートしているな、と感じられるところがありました。
また、最先端技術の兵器転用の危険性に関して言及していたのも良かったと思います。

原作ではVRゲームはスーツを着込んでプレイしなければいけなかったんですが、このドラマ版ではピッカピカのヘッドセットを付けるだけでプレイ出来るようになっています。
あのヘッドセットは後に出現する「水滴」を彷彿とさせるような鏡面仕上げのデザインでかっこよかったです。

 

映像の迫力に関しても概ね楽しめました。

VRゲーム内の描写に物足りなさを感じたのは事実ですが、「脱水・再水化」の描写や「上空に出現する巨大な眼」の描写などは良かったです。

しかし何と言っても素晴らしかったのは「古筝作戦」!(ナノワイヤーによるジャッジメント・デイ号の輪切り)。

原作では第一部のクライマックスでありながら案外サラッと描かれていたところですが、今作では実際に起きたことの凄惨さがクドいぐらいに描かれていて最高でした!(原作では、子供もあの船で暮らしているなんて描写はなかったはず)

ぼくはスプラッターな場面が大好物なので大喜びでしたが、嫌いな人はあそこで度肝を抜かれそう。
あの場面はほんとうに素晴らしい出来だったので、「水滴」の活躍シーンにも期待が持てそうです。

※ただ、あの作戦って「記録デバイスを無傷で回収したいから部隊を送り込めない。ナノワイヤーによる切断なら修復は容易。」という理屈が一応あって、原作を読んだときは「ふむふむ」と納得してしまったんですが、あらためて映像として見せられると「いや、これじゃ回収不可能じゃね?部隊送り込んだほうがよかったんじゃね?」と思ってしまいました。
普通にバンバン誘爆してますし、最終的に座礁して大変なことになってますし。

ん?と思ったところ

全体的には面白い!と思った一方で、ここはどうなん?と思った点もあります。

 

その最たるものが、ETO(地球三体協会)に関する描写が少なすぎる、という点。

原作では協会内にも派閥があり、一枚岩ではないことが描かれていました。

三体人による人類滅亡をもくろむ「降臨派」、三体人の救済と人類の進歩を目指す「救済派」、三体による侵略後も子孫の存続を願う「生存派」、この3つの派閥に分かれており、エヴァンズは降臨派、葉は救済派の考えを持っていました。

対して今作では、葉とエヴァンズが決別したらしいということは分かるのですが、内部の勢力図や信仰については描かれていません。
「なんか異星人を主として崇めている宗教団体」みたいな、ものすごくぼんやりとした描き方。

まあ、ETOは第一部以降で重要な組織ではなくなるというか、三体人の命を受けてサボタージュする組織という程度に単純化されてしまうので、そこに時間を割く必要はない、という判断もわからなくはないです。

わからなくはないですが、描写を大幅に削ってしまったせいで、ETOの信仰とは何か、葉文潔の協会内での立ち位置、葉とエヴァンズはなぜ決別したのか、などがよく分からなくなっていると思います。

--追記--

見返していて思ったのですが、原作とは違って葉とエヴァンズは決別していなかったのかも。
なまじ原作を読んでいたために、エヴァンズ=降臨派だという先入観を持っていました。

エヴァンズは三体人を主と崇めていて(=原作の救済派のように見える)、三体人が人類を危険視した際に動揺しています。

人類を滅亡させる気なら、危険視してくれた方が都合がいいはず。ということは、エヴァンズも葉と同様に人類を滅亡させる気は無かった…?

尋問シーンで葉は「エヴァンズに娘は会わせていない」と言っているのですが、エヴァンズは葉が持っていたものと同じヴェラの写真を持ってますし、VRゲームで幼少期のヴェラが登場するため、少なくともエヴァンズはヴェラのことを知ってはいたということになります。

葉とエヴァンズは決別していなかったが、あえて距離を置くことで当局の目を眩まし、2人とも捕まってしまうリスクを避けたのかもしれません。

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エヴァンズが童話を読み聞かせたことで三体人の人類に対する認識が変わるというシーンがあるため、三体人の目的が人類との共存から侵略へと途中でシフトしたように見えるのも疑問に思ったところです(原作では、三体人は最初から地球を侵略する気満々だった)。

YoutubeにあがっているInside Episode 4を見ると、「エヴァンズは致命的な間違いを犯した」と言っているので、今作の三体人は当初、人類と共存するつもりだったっぽいですね…この改変はあまりうまくないかも(共存するつもりなら、もう少し穏便な方法で少しずつ布教・洗脳できたはず)。

 

エピソード7で葉文潔とソールが会話するシーンがありますが、「神と遊ぶな」のジョークは何だったのかはまっっったくわかりませんでした!(原作では、割とはっきりしたヒントだった)

Play=演奏する/遊ぶのダジャレになっていたのは分かるんだけど、あのジョークからどうやって黒暗森林理論を導き出すのかは見当がつきません。

--追記--

このジョークに関して、自分なりに考えてみました。

葉はソールに会う前に「ゲーム理論」と「フェルミパラドックス」の本を手に取っています。

この2冊を掛け合わせることによって黒暗森林理論が導き出される、というのは何となくわかります(ちなみに、Wikipediaフェルミパラドックスを調べると黒暗森林理論の項がある)。

三体人に監視されているため、ヒントをそのままソールに伝えるわけにはいかない。そのため葉が考え出したのが、あのジョークだったと。

ジョークの内容は「アインシュタイン(人)が楽器を演奏した(信号を発信した)ことで神(三体人)に自分の存在を知らせてしまったがために、神に叩き潰された」と解釈することができます。
破壊されたヴァイオリンは、送信機もしくは信号増幅機(太陽)と解釈することもできるでしょう。

そして「アインシュタイン」を「三体人」、「神」を「三体人よりも更に高次の異星人」に置き換えても成り立つのでは...?というところから、ソールは黒暗森林理論に到達するのかもしれません。

ただ、このジョークでは肝心の「宇宙社会学の公理」「猜疑連鎖」「技術爆発」というキーワードが抜けているため、厳密には黒暗森林理論とは違うと思うんですけどね......

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あと、最後は「虫けらの反撃はここからだ!」的なアツい感じで終わるのは第一部のラストと同じなのですが、イナゴではなくセミになっているので意味がよくわからなくなっていたのが惜しかったです。

 

主要キャラクターについての補足

オギー(エイザ・ゴンザレス

第一部の主人公、「汪淼」をベースにしたキャラ。

汪と同じナノテク研究者ということで、「なるほど、シーズン1はこいつが主人公ね」と思いきや、その役割の半分をジンに奪われてしまっている。

スクリーンタイムの半分ぐらいは、涙目で口を半開きにして中空を見つめているだけ(半分は言いすぎか)。

ソールとの恋模様が匂わされているので、もしかすると『黒暗森林』の「荘顔」的な立ち位置で再登場する…のかもしれない。

ソール(ジョヴァン・アデポ)

『黒暗森林』の主人公、「羅輯」をベースにしたキャラ。

原作だとかなり人気の高いキャラだけど、今作ではエピソード8で面壁者に抜擢されるまでこれといった見せ場もなく、魅力的なキャラとは言えなかった。

どこをどう見ても真面目くんにしか見えないので、女好き・ドラッグ好き・自堕落、という描写がどうにも取ってつけたようで、単純にキャスティングミスのように思える。もうちょい軽薄に見える人をキャスティングしてほしかった。

シーズン2では、原作にあるヤバい妄想のくだりは丸々カットされそう。

ジン(ジェス・ホン)

『死神永生』の主人公、「程心」をベースにしたキャラ。

VRゲームの謎を解いたり、ETOに勧誘されたりスパイさせられたり、階梯計画に必要な推進方法を立案したりと忙しく、シーズン1の実質的主人公といってもいい。

ちょっと役割が集中しすぎている気がしないでもない。

ウィル(アレックス・シャープ)

『死神永生』の「雲天明」をベースにしたキャラ。

最初は「なんかパッとしない奴だな」ぐらいに思ってたのに、最後のソールとのやりとりで不覚にも泣きそうになってしまった。

ジンと夜空を見上げながら星の話をするエピソードぐらいは入れても良かったんじゃないの?と思わなくもない。

ジャック(ジョン・ブラッドリー)

名前は忘れたけど、『死神永生』で青汁だかなんだかで大儲けした人をベースにしたキャラ。

正直、なぜ彼が殺されなければならなかったのかは全く分からなかった。
というか、彼を殺さなかったらジンの懐柔がワンチャンできていたのでは?

メタ的な目線で言えば「ウィルに莫大な資産を遺し、それで星を買わせるため」なんだけど、生きていようが三体人にとってはなんの問題もない気がする。

ラジ(サーメル・ウスマニ)

ジンの恋人。

ウィルとの三角関係を演出するための当て馬的なキャラかと思いきや…

大義のためなら手を汚すことを厭わない軍人というキャラ付けで、『黒暗森林』で自然選択の艦長となる「章北海」がベースになっていると思われる(宇宙軍に志願するまで分からなかった)。

シーズン2ではかなり活躍してくれるはず。がんばれ!

葉文潔(ジーン・ツェン、ロザリンド・チャオ)

ほぼほぼ原作通りのキャラ。

…だが、三体とコンタクトを取ったあとに上司の雷、そして夫であり娘の父でもある楊を殺害する場面が省かれているのは首を傾げるところ(そもそも今作では、娘の父は楊ではなくエヴァンズになっている)。

この場面は、後から考えれば猜疑連鎖を示唆していた重要な部分だと個人的には思っているので、省いちゃダメだったのでは?

ちなみに、原作を読んでいても彼女が人類の滅亡を望んでいたと解釈する人がいるのは驚き(彼女の目的は、人類よりも高度な文明を持つ存在に人類を導いてもらうことであって、滅亡ではない)。

ダーシー(ベネディクト・ウォン

みんな大好き「史強」をベースにしたキャラ。

概ね原作通りと言えるとは思うが、汪淼とのバディ要素が一切なくなってしまった影響で、原作と比較して活躍の場面が少なすぎる。

シーズン2ではもうちょい活躍の場を増やしてほしい。

ウェイド(リーアム・カニンガム

対三体文明作戦の指揮官。

『死神永生』で同姓同名のキャラがいるが、シーズン1での役割は主に「常偉思」をベースにしている。

「古筝作戦」「面壁計画」「階梯計画」と、対三体の主要作戦すべての立案や指揮を行っているゴリゴリの超絶有能マン。
こういうポジションで有能なキャラって意外と珍しい気がする。

三体に屈するとは思えないが、これからの動向が気になる。

エヴァンズ(ジョナサン・プライス

原作通りと思いきや実は考え方が違ったかもしれないキャラ。

原作だと、最初から(葉文潔から三体文明のことを聞かされたときから)人類の滅亡を画策していたけど、今作では葉文潔と同じ考えを持っていたっぽい(だから子をもうけたのだろうか)。

ヴェラ・葉(ヴェデット・リム)

第一部の「楊冬」がベースになっているキャラ。

このドラマでは葉文潔とエヴァンズの娘ということになっている。

科学の崩壊と、その原因を間接的に作ったのが母だったという事実で心を病み、身投げしてしまう。

VRゲーム内でジンの前に現れる少女は、ヴェラの幼い頃の姿を模したものだったことがエピソード7で明らかになる。が、それよりも前に、エヴァンズの部屋に置いてある写真を見ても分かる。

主要人物5人がヴェラの教え子ということになっているのが、原作との最も大きな違いか。

それと、恋人の破天荒博士「丁儀」が出てこなかったのがガッカリ。
こいつはかなり重要なキャラなんだが…

タチアナ(マーロ・ケリー)

ETO内部の裏切り者を粛正する女をベースにしたキャラ?

美人狂信者。

葉ともエヴァンズとも交流が深く、暗殺者としても活躍しているが、なぜETOに属しているのかはよく分からなかったし、墓参りをするダーシーと接触した理由もよく分からなかった。

シーズン2ではソールを暗殺する過程でダーシーと対決するのか、ほかの面壁者の破壁人として活躍するのか、動向が気になる。

ソフォン/智子(シー・シムーカ)

ともこ。

招待されていない人物をVRゲームから強制ログアウトさせるとき等に出現する。
ジンが最初にVRゲームをしたときには登場していない
→ジンは招待されたということになる
→ヘッドセットを手渡した葉文潔がETOの一員だった、という伏線にもなっている。

ペタッとした七三分け、スリットが深い黒服、背に差した日本刀、というビジュアルがなんだかスゴい。
ETO内部の誰かしらの性癖が反映されているのかと考えるとちょっと笑える。

原作だと登場するのは『死神永生』なので、かなり早い段階で登場してびっくりした。

 

 

以上。こんな感じでした。

Netflixよ、一刻も早くシーズン2を作ってくれ。